アンダクパ 第78話

彼は思い返していた。

小さな頃、河原で遊んだ。
リンゴくらいの大きさの碧い石。
ヤンモ。
私語。


中学生の頃、河原で死にかけた。
紅く染まりゆく川。
コサダルパ。
死期。


そして現在。
ぺティグリーチャムの山。
アンダクパ。
死後。



思い返す。

遊んだ…
死にかけた…
死んだ…?



ぺティグリーチャムはカラカラに乾いて、手足を動かすだけでは抜け出せそうにない。
また、叫びたくなる。

「ヤンモコサダルパ」

言えない。言ってはならない。
蝋燭のように蕩け、このドッグフードから抜け出せたら。
どんなに良い事だろう。
それでも言ってはならない。

そんな日々を繰り返すうちに、思った。

もしかしたら、この世界はぺティグリーチャムしか無いのではないのだろうか?
また、死んだ愛好家たちもここに居るのでは無いのだろうか?

だがそんな事は、彼にとって最早関係のない事だった。
彼の胸はいま、「里帰りがしたい」この気持でいっぱいなのである。